いばらきの食に挑戦する人たち
農業生産法人 株式会社ミゾグチファーム溝口 洋一さん(神栖市)
「若松・千両」を作る会社 ミゾグチファーム
松の出荷作業
「お菊の松」
お正月に欠かせない「若松」と、花の少ない冬に赤や黄色の美しい実をつける「千両」。茨城県は「若松」「千両」の生産量日本一を誇ります。
茨城県神栖市の特産品である「若松・千両」は、神栖市波崎地区での生産が最も盛んです。
波崎地区にある農業生産法人 株式会社ミゾグチファームが生産する若松は年間約160万本。商品は若松、根引松などをはじめ、溝口社長が厳選した松を極上に仕上げた「特級品」や、世界中のバイヤーが注目する野中菊農園の「お菊の松」、「ピンポン松」などのブランド松の販売も行っています。
鮮やかな色の実をつける千両
千両は年間約90万本を出荷しており、栽培面積は若松・千両合わせて42haにもなります。
ミゾグチファームの3代目 溝口 洋一さんは、先代たちが培った栽培技術と生産規模を足がかりに、会社の法人化を行いました。
取引先は北海道から九州まで42市場に渡り、全国の花屋、スーパー、問屋、ホームセンターやコンビニエンスストアなどで販売されています。
「お客さん目線」の商品作り
ポストパレットによる荷作り
ポストパレットによる出荷の様子
「うちの強みは『お客さん目線』を徹底しているところです。お客さんが欲しい時に欲しい物を欲しい量出す。お客さんを楽にする事を考えた商品作りをしています。
例えば松なら、通常の出荷規格は100cmですが、90cmが欲しいと言われたら90cmの松を選果して出します。
お客さん側で松を10cm切るのは手間ですし残渣(ゴミ)も出ますから、そうしたお客さんの負担を減らしたい。商品のクオリティを保ったまま、お客さんの要望に応える事がうちの『商品力』に繋がっています」と溝口さん。
松の出荷も、従来は裸のままの松をトラックに人の手で積み込んでいましたが、2016年より、フォークリフトで積み降ろしを行う「ポストパレット」による出荷を開始。
ポストパレットの採用により、品質を保持したまま機動力が上がり、社内はもちろん取引先からも格段に扱いやすくなったとの声をいただいているそうです。
270坪の巨大な低温倉庫
パレットごと積み上げて保管できる
「この業界では手積み・手降ろしは当たり前でした。従来は出荷に2時間かかっていましたが、ポストパレットにしてから10分で終わります。お客さんが扱いやすいようにと始めたことですが、人員も減らせますし、良いことしかないです」
さらに、270坪の巨大な低温倉庫もパレットごと積み上げて保管できるよう改良し、これまでより多くの松を冷蔵保存できるようにしました。
低温倉庫で保存している松の下に張られる水は、アルカリ電解水を使用。雑菌を抑えることができ、品質を保ったまま松の更なる長期保存が可能になりました。
ポストパレットによる松の出荷を行ったのは、全国でミゾグチファームが初めてだったそうです。
外から見た楽屋
楽屋の中
バケット輸送の準備
千両を立てたまま出荷
11月中旬から12月にかけて赤や黄色の色鮮やかな実をつける千両。
千両は直射日光を嫌うため、竹を組んだ「楽屋(がくや)」と呼ばれる囲いの中で、苗木から3年程かけて育てられます。楽屋の中で栽培することで、実を鳥害から守り、直射日光で葉が焼けるのを防いでいます。
さらに「お客さん目線の商品作り」はここでも行われています。
「千両の出荷も従来は、千両を切って束にして横にして箱に入れてという乾式輸送を行っていました。この方法だとお客さんの手元に渡った後、お客さんが束から出して葉を整えなければなりません。それでは残渣も出ますし、千両はいじるほど実こぼれするので、実こぼれに気をつけながら葉を整えるのは手間のかかる作業でした。それを解決したのが『バケット輸送』です。バケット輸送は、水を張った縦型のバケットに千両を立てたまま出荷できるので、お客さんは届いた千両をそのまま使うことができます。この方法だと格段に残渣も減り、実こぼれもしにくいんです」
溝口さんは、こうして「お客さんの声に耳を傾けること」が他産地との競争で優位に立てる理由だと言います。
ミゾグチファームでは、松等の出荷の過程で出た残渣をバイオマス燃料として利用する取組みも行っています。
ドローンを活用した作業の効率化
「ピンポン松」
若松の栽培過程では、農薬散布が必要不可欠です。
ミゾグチファームでは害虫が発生しやすい夏、16.5haの広大な松畑に2週間に1回の頻度で農薬を散布します。
「大量の農薬散布作業はスタッフの身体によくありませんし、真夏の炎天下で行う作業自体もかなり過酷なものです」
そこで溝口さんは『ドローンによる農薬散布』を開始しました。
「1組3名でドローンの操縦、農薬の補充、場所の指示などを行います。かかる時間は準備を含めても人が手作業で散布していた時の半分以下になり効率化できました。散布量も動きに無駄がなくなったおかげで従来の1/10の量で済みます」
さらに、散布時の無駄な動きがなくなったことで、農薬の効果も上がったことには驚いたと言います。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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「今後は、波崎地区全体の若松・千両生産農家がスクラムを組み、出荷体制も等級も全て統一することが目標です。人手不足でも、皆で同じ品質のものを同じ値段で出せるようになれば、強い産地になれます。自分のためではなく、地域の皆で団結することで厳しい時代を生き抜いていきたい。
また、大量の竹で作る千両の『楽屋』も、もう少し近代化できないかと思っています。残渣も出ない、地球に優しいものができないかと考え、楽屋の代わりに太陽光パネルの下での施設栽培の試験運用を始めるところです」
若松・千両などの“緑を絶えず地上に作り続ける農家”は近年の環境問題に際し、改めて評価される時代になってきたと言う溝口さん。
今後はさらにICTを活用するなどして、カーボンニュートラルへ貢献したいと語ってくれました。
インフォメーション | |
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名称 | 農業生産法人 株式会社ミゾグチファーム | 住所 | 茨城県神栖市波崎198-1 |
お問い合わせ | TEL:0479-44-5310 |
WEBサイトURL | https://mizoguchi-farm.jp/ |
その他の情報 | ※このページの情報は、2021年12月時点のものです。 |
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