いばらきの食に挑戦する人たち
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JA水郷つくば大根生産部会 山越 隼人さん(牛久市)
茨城県青果物銘柄産地指定「うしく河童大根」を育てる
JA水郷つくば大根生産部会の部会長を務める山越さん
収穫したてのうしく河童大根
茨城県南部に位置する牛久市。牛久沼に隣接することからもわかる通り、豊富な水源となだらかな平地が続く、県内有数の良質な土壌を有する地域です。そんな牛久市では、牛久沼の河童伝説から誕生した3つの「うしくブランド」があります。それが「うしく河童西瓜」「うしく河童米」、そしてこの「うしく河童大根」です。 この「うしく河童大根」は、その安定した生産量と美味しさから、茨城県青果物銘柄産地指定も受けている、県が誇るブランド大根です。品種は春の「貴誉」、秋の「福誉」など、部会が指定したものを生産者全員で育てています。JA水郷つくば大根生産部会では、独自の栽培基準を設けているのも特徴です。部会で最も大切にしているのは“食味”。甘みと味わい、そしてシャリシャリとした食感を大切に育てているといいます。 そのため、春先に収穫される春大根は、サラダなど生食で味わうのがおすすめ。寒くなる冬には、味の染み込みやすさと煮崩れのしにくさから、おでんやふろふき大根など煮込み料理にも最適です。ほぼ100%が市場出荷されるこの大根。うしく河童大根が旬を迎える冬の時期になると、おでんを始める都内の飲食店もあるのだとか。 そんなJA水郷つくば大根生産部会32名の部会長を務めるのが山越隼人さん。平均年齢60歳を超えるメンバーの中で、若干40歳の山越さんは、その研究熱心さと近年増えてきた若手を引っ張る牽引力で「うしく河童大根」ブランドを守り続けています。
就農当初から10倍以上に農地拡大
うしく河童大根の収穫期は春~初夏と秋~初冬の年2回
収穫を待つうしく河童大根
山越さんが就農したのは、大学を卒業して2年後のこと。祖父母が営む落花生畑などを手伝っていたといいます。その後、牛久市の農業ヘルパーや親戚の農家で修行。そんな修行先で作物としての大根の魅力を知り、栽培作物として選ぶことを決意しました。 「うしく河童大根」はすでにブランド化されており、その美味しさと安定した品質が市場で高く評価されていたことも、大根を選んだ大きな理由のひとつだといいます。就農当初約40アールで始めた畑は年々拡大し、現在は7ヘクタール(700アール)もの畑で「うしく河童大根」を育てています。 山越さんは、大根づくりで最も大切なのは「うしく河童大根」のシャキシャキとした食感と甘みだと語ります。食味を何より重視しており、品種選びはもちろん、堆肥による土づくりや環境整備を大切にしているといいます。 「肥料も大切なんですが、土の中にいる微生物の環境も重要だと思っています。良い微生物も悪い微生物もいていい。多様性があることが大切なんです。でも、1回の大雨で元も子もなくなることもあります。だからこそ、微生物の環境を整えるために、土をしっかり柔らかく、空気をたくさん含んだ畑にすることが大切なんです。固い土では根が縦に裂けてしまう“裂根”が発生します。だから、根が伸びやすく大根が育ちやすい柔らかさをつくってあげることが大事です。また、7ヘクタールある畑も常に大根を育てているわけではなく、春と秋でしっかり休ませてあげることも大切です」と語ってくれました。
JA水郷つくば大根生産部会での若手育成
1本ずつ手で収穫。柔らかく空気を含んだ土なのですんなり抜けます
オススメはおでんや煮物と山越さん。味が染み込みやすく美味しくいただけます
山越さんが出荷する「うしく河童大根」は年間約300トン。部会の中でもトップクラスの生産量を誇ります。近年、若手が増えてきたこともあり、青年部を立ち上げてSNS(Instagramなど)での情報発信を行うなど、新たな取り組みにも積極的に挑戦しています。 もちろん、情報共有の場としても活用されており、「うちの畑がこういう状況で…」などと悩みを相談すれば、先輩農家たちが包み隠さず教え合うそうです。こうした活発な意見交換が行われていることもあり、JA水郷つくば大根生産部会には若手が続々と参加。部会の若返りが進み、新しい挑戦をする農家が増え、「うしく河童大根」ブランドのさらなる品質向上と美味しさに磨きがかかっています。 「僕が知っていることは全部教えます。でも、それって基本的なことなんです。だから自分でいろいろ失敗したほうがいいと思っています。僕らの失敗は伝えることはできますが、自分で失敗しないとわからないことって多いと思うんです」と山越さん。 実際、山越さん自身も出荷時期を見誤るなど、さまざまな失敗を経験してきたといいます。その一方で、県農業改良普及センターと連携しながら、株間や栽植密度のデータ収集、新しい資材への挑戦など、常に研究を続けています。今後の目標は「畑によるバラツキをなくすこと」。これからも美味しい「うしく河童大根」を作り続けたいと語ってくれました。
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「僕にはいま中学生の子どもがいるんです。その子が僕の仕事を見て『楽しそう』とか『仕事して稼げる』って思ってもらえるようにしたいですね。よく“儲かる農業”といわれますが、作物はなんでもいいと思っています。しっかり良いものを作って、買ってくれる人をつかまえられれば、作物は本当になんでもいいんです。とりあえず畑の面積は現状で満足しています。とにかく品質の良いものを作り続けること、畑や気候による品質のバラツキをできるだけなくしたいですね。農家という仕事を、子どもたちに憧れてもらえるような仕事にしたいと思っています」と山越さんは話します。
| インフォメーション | |
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| 名称 | JA水郷つくば大根生産部会 |
| 住所 | 牛久市 |
| WEBサイトURL | https://ja-sgt.or.jp/ |
| その他の情報 | ※このページの情報は、2025年11月時点のものです。 |
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