いばらきの食に挑戦する人たち
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株式会社安重水産 安重 幸次さん（鹿嶋市）
漁師あっての加工業者だからこそ三方よしのシラス作り
安重水産代表・安重幸次さん
水揚げされた中から安重さんが厳しい目利きで買い付け
現在、全国の港で大きな問題となっている後継者不足問題。その根底には良い魚を獲っても満足な値段が付かないことで十分な利益を得られないことがひとつの原因となっています。そんな現状に疑問を持ったひとりが地元を愛するシラス加工業者・(株）安重水産の安重幸次さん。父の時代は南は千葉の飯岡から北は北茨城まで仕入れに奔走し、大量に仕入れたシラスを加工し市場出荷してコストダウンを図るスタイルでした。その中でも天日干しにこだわるなど、高い品質に努めてはきましたが、幸次さんはそのスタイルを刷新します。 「誰も作れないような高品質のシラスを作りたかったんです。シラスといえば静岡や湘南のイメージがありますが、茨城で最高のシラスを作っているんだと知ってほしかった」と当時の想いを語ります。そんなシラス作りに絶対に欠かせないのは圧倒的に新鮮で美味しいシラス。そのため幸次さんは地元鹿島灘漁業協同組合に所属する研究熱心なシラス漁師たちと手を組み、より質の高いシラス漁を推進することを決めました。 「僕ら加工業者は漁師あっての存在なんです。いくら美味しいシラスを作りたくても、そもそも高鮮度なシラスを獲ってもらわなくては素材のポテンシャル以上のシラスは作れないんです。だから漁師がまずは潤ってくれなくてはいけない。良質なシラスを高値で買い付けする事により、鮮度管理を徹底して漁港まで届けてもらう。そうすると競争原理が働いて、より鮮度よく管理をしてシラスを獲ろうとする。だから鹿島灘漁協のシラスの値段は周囲の漁協よりも高いんです。それにより、漁師の気合も入り、高鮮度・高品質のシラスを仕入れることができるようになりました」と幸次さん。 漁師も活気に溢れ、質の高いシラスも作れ、消費者に美味しいシラスを届けられる。まさに三方よしの好循環がはじまりました。
科学的根拠「し」字率の誕生と「常陸乃国しらす」
「常陸乃国しらす」ブランドを冠する安重水産の釜揚げしらす
鮮度の良いシラスは内臓のタンパク質が縮むため美しい「し」の字を描く
茨城県は全国有数のシラス水揚げ量を誇ります。2隻の船の間に網を渡すことで大量のシラスを獲る2艘曳きが主流の現在、茨城県では少量でも短時間で鮮度の高いシラスを獲ることができるかけ回し1艘曳きで行われる漁法が中心です。かけ回し1隻で短い距離を引くことで網にかかるシラスは少なくなりますが、傷つきやすいシラスの鮮度を損なわずピチピチしたまま氷で活け締めして水揚げできるのです。 そして、前述したように、高品質なシラスにはより高い値段が付くようになったことで、そもそも標準値よりも鮮度の高い茨城のシラスの質をさらに高めるための努力と工夫に取り組み稼げる漁師が現れ始め、若手が増え漁協に活気がみなぎってきたといいます。それは網の目の細かさ、船を走らせる距離、船上に上がったシラスの温度、秒単位にこだわった冷却手法、船の水槽の温度に至るまで。そのこだわりを上げれば枚挙に暇がありません。 さらにそんな漁師たちの努力とそれを加工したしらすの鮮度を科学的根拠に基づいて数値化したのが、茨城県水産試験場発表の『「し」字率』の存在だったと幸次さんは語ります。この「し」字率の研究は、シラスの鮮度が良いとシラス加工品が「し」の字を描く割合が高くなるということを明らかにし、さらにシラスの漁獲から加工までの積算温度を検証したところ、保冷中の魚体温度を１分単位で計測して積算温度が300℃以下であれば、「し」字率が95％以上になることを発見しました。 茨城県水産物ブランド化の取組の流れにも乗り、この「し」字率が「常陸乃国しらす」の誕生へとつながりました。
安重水産の常陸乃国しらすと呼ばれるために
「常陸乃国しらす」のロゴを配した輸送冷凍車
天日干しのこだわりなど、昔から変わらないスタイルも
「し」字率95％以上という非常に厳しい基準で定められ、科学的根拠に基づいた品質基準の茨城ブランドの「常陸乃国しらす」。そのブランド化を追い風に、幸次さんはその名に恥じないような、高品質でふっくら食感の美味しさを持つシラス作りに邁進します。そのひとつが１時間当たり４トンもの釜揚げシラスを加工できる自動煮沸釜に500㎏～600㎏しか原料となるシラスを入れません。大量のお湯の中でシラスを泳がせることでシラスがくっつくことなく、一匹一匹にムラなく均一に煮沸することができるようになったといいます。それにより滅菌処理もでき、塩分濃度も従来に比べ低く設定できるようになり、シラスの旨味をより引き出せる最適な塩分濃度で仕上げることができるようになったといいます。 また、漁師さんたちが徹底的に鮮度にこだわってくれたからには、幸次さんもその鮮度管理には徹底的にこだわります。輸送の冷凍車の温度、釜揚げしてから冷却するまでの温度…。そのこだわりは分単位では満足できず秒単位でこだわります。 「この仕事について35年。いままで何万、何億回と水揚げされたシラスを自分の目と手で確かめてきました。いまでは漁協の職員さんに『安重さんに手を入れてもらえるようなシラスを獲ってこないとダメだよ』と若手の漁師に言ってもらえるようになりました。茨城にいままで食べたことないような美味しい釜揚げ『常陸乃国しらす』があるってことをもっと多くの人に知ってもらいたいです。ひと口食べてもらえたらこの美味しさは分かってもらえるはずです」と幸次さんは自信に満ちた表情で語ります。
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「次に取り組みたいと思っていることは大きくふたつあります。ひとつは常陸乃国しらすの美味しさをひとりでも多くの人に知ってもらい、茨城のシラスの認知度を上げること。そして、もうひとつは地元鹿島灘漁協の若い漁師たちにもっと稼げるようになってもらうことです。ひとつめは現在、髙島屋に入っている中島水産さんの店頭で試食販売などさせてもらっています。地道なPR活動ではありますが、そこでひと口食べてもらえたら、食感や味の違いは分かってもらえる自信はあります。それくらいこだわって作っていますから！実際にお客様からの『美味しい』って言葉や笑顔を見ているとやり甲斐があり疲れが吹っ飛びますね。そして後者は特に重要だと思っています。漁師あっての加工業者。値段を叩くようなことはあってはいけないと思います。いいものを獲ってきてくれたらちゃんと高く買う！お互い鮮度管理を徹底し、切磋琢磨しながら、”日本一の高品質なシラス”をつくり、いつまでも活気ある漁港にしていきたいですね」と安重さん。 若い漁師たちの未来にまで目を光らせます。
| インフォメーション | |
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| 名称 | 株式会社安重水産 |
| 住所 | 鹿嶋市大字武井釜880 |
| お問い合わせ |
TEL: 0299-69-2227
FAX: |
| WEBサイトURL | https://anjusuisan.com/ |
| その他の情報 | ※このページの情報は、2025年10月時点のものです。 |
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