いばらきの食に挑戦する人たち
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会沢巨峰ぶどう園 会沢 将史さん(結城市)
シャインマスカット栽培の茨城県における先駆者
茨城県ぶどう連合会副会長を務める会沢巨峰ぶどう園の会沢将史さん
170aの農地の中、病害虫の発生リスクを軽減できるハウス栽培が7割を占める
茨城県西地域にある結城市で、約70年に渡る伝統を有する会沢巨峰ぶどう園。地域有数の規模を誇る170aの広大な土地で、害虫の侵入を防ぎやすく、雨による病害や裂果のリスクを減らして減農薬栽培を可能にする施設栽培を1970年代から採用し、農園名にも入る種あり巨峰をはじめ、現在の主力である欧米系の新品種を中心に約20品種のぶどう栽培を実現してきました。 茨城県ぶどう連合会副会長を務める会沢将史さんは、祖父と父が築いた同農園を受け継ぐ三代目。フレッシュな甘みと歯切れの良さが際立つ、幅広い世代を虜にするシャインマスカットの茨城県における栽培の先駆者です。 かつて同連合会青年部に所属していた会沢さんは、若手生産者の代表としてシャインマスカット現地栽培試験のトップバッターとして選抜され、その知見が県内のぶどう農家達へ貴重なヒントとして還元されています。
性質が異なる苗木と対話する
樹齢10~30年のぶどうの苗木。木々の個性に向き合いながら、丹精込めて最適な手入れを施す
副梢の手入れで樹勢と果実形成のバランスを探る
結城市は鬼怒川や田川など水源が豊富で、結城台地と呼ばれる関東ローム層に覆われた肥沃な土壌で温暖な気候に恵まれています。 しかし、糖度を高めるために不可欠な昼夜の寒暖差が少なく、実は気象的にはあまりぶどう栽培に適していない地域です。 宝石のような輝きを放つ房姿と、口に広がる濃厚な果汁が評判の会沢さんのぶどうは、一体どんな栽培によって生み出されているのでしょうか。 「まずは樹勢の強さを見極めています。幹の太さ、枝の伸び、葉の色をチェックして、一本一本の樹の管理に反映させていますね。あとは枝の摘心(枝の先端や脇芽を切り取り、生長を調整する作業)。この手入れをしておかないと実が肥大しないんですよ」とポイントを明かします。 枝の手入れはただ切ればいいという単純なことではなく、天候、品種、生育状況によってタイミングも変わります。つまり、長年の経験値に裏打ちされた直感力が味や収量を左右するのです。 「切り方の長さや角度で、次の作業が1ヶ月後に伸びたりと、その後の効率も変わってくるので、あまり人任せに出来ないんですよ。ぶどう農家はみんなそうだと思いますが、やっぱり基本的に作業を全て自分でやりたいんですよね」と悠々たる作付け面積を誇る農園にもかかわらず、会沢さんがほとんどの手入れを担当しています。 そして、こだわりは土づくりにも。乳酸菌を多く含む竹パウダーといった土壌改良材、アミノ酸やミネラルを豊富に含んだ魚介類・甲殻類・海藻など有機質肥料など、木と対話して試行と検証を繰り返しています。 茨城県内でも1房1kgにもなる大ぶりのぶどう栽培が一時期トレンドになりましたが、会沢さんはサイズ云々よりも、安定的にしっかり味を乗せる栽培に早々にシフト。 農園の目と鼻の先にある直売店のアドバンテージを活かし、棚上で甘みをたっぷり蓄えた完熟のぶどうを、最良のタイミングで収穫して店頭に並べています。 ぶどうの粒の並びを整える摘粒作業もほぼご自身のみで行うなど、見た目も重視。生産性と美しさを兼ね備えた妥協しないぶどう栽培への姿勢を貫いています。
未知なるぶどうを追い求めて珍しい新品種に挑戦
直売ではまだスーパーでは出回らない希少な新品種がラインナップに並ぶ
種がなく皮ごと食べられ、濃厚な甘みとコクが特徴の「富士の輝」は次世代のホープ
気候の不安定さが日常となる近年。原因不明の育成不良や暑さによる過熟に頭を悩ませながら、試行錯誤を重ねる日々が続く中でも、会沢さんは毎年、試験的に新たなぶどうの品種の栽培を行っています。その飽くなき挑戦を続ける理由は、地域の気候や土壌にマッチした品種への探究心です。 「一番多く生産しているシャインマスカットは、見た目良く作るのが難しい。もっとうちの農園の環境で作りやすく、形が良く、美味しいと三拍子揃ったパーフェクトな品種を探し求めているんですよ」 栽培法や新品種などの主な情報源は、茨城県ぶどう連合会青年部時代のネットワーク。仲間と情報共有しながら新品種にチャレンジする際、注目するのは交配親の品種です。 「例えば、人気上昇中の『富士の輝き』はシャインマスカットとウィンクを交配したもの。どちらの品種も栽培経験があり、手間暇がかかるマイナスイメージがなければ、1、2本の苗木を植えています」とセレクトの判断基準を示しています。 直売店のボードには、まだほとんど市場に出回っていないジュエルマスカットなどの新品種、そして適度な果肉の弾力と、シャインマスカット以上の芳香が贅沢な味わいを演出する会沢ぶどう園オリジナル品種のシャインゴールドといった見本の写真と出荷時期が並び、期待と高揚感を呼び起こします。 現在は、シャインマスカット一強のぶどう業界。そのトレンドの一歩先を読み、先んじて新品種の栽培に着手し、新たなファンを獲得し続けています。
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等身大のぶどう農家の姿を披露するSNSを活用しながら、会沢さん夫妻と両親の4人で営む会沢巨峰ぶどう園。 「後継者も今のところはいないので、妻と二人で楽しく農園をやっていきたいです。本当にそれだけですね」 主作物であるぶどうの新品種を追い求めつつ、市場ニーズに応じたハウス栽培できる新たな作物の展開も視野に入れ、専門性と柔軟性を兼ね備えた農業経営を模索中です。 フレキシブルな風土が息づく茨城県ぶどう連合会とともに、茨城のぶどう栽培の発展を願う会沢さん。 結城に適した高品質で高収量のぶどうを追求するチャレンジャーとして、これからも未来を切り拓いていきます。
インフォメーション | |
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名称 | 会沢巨峰ぶどう園 |
住所 | 茨城県結城市上山川2986-1 |
お問い合わせ |
TEL: 070-2298-2240
FAX: 0296-35-2240 |
WEBサイトURL | https://www.instagram.com/vineyard.aizawa/ |
その他の情報 | ※このページの情報は、2025年8月時点のものです。 |
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