いばらきの食に挑戦する人たち
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石井崇士さん 石井 崇士さん(高萩市)
高品質な野菜や果物を安定的に供給するポリネーション(花粉交配)
養蜂家の石井崇士さん
雄のミツバチもまるまるとして大きい。
野菜や果物は、受粉が上手くいかないと変形したり、結実率が低下してしまうものがあります。 このため、高品質な野菜や果物を安定的に生産するために、ミツバチによるポリネーション(花粉交配)が重要な鍵を握ります。 恵み豊かな食を生み出す茨城県の農業には、土や水、気候など適した環境、技術や経験のある農業従事者だけでなく、ミツバチという小さな縁の下の力持ちの存在が欠かせません。 そんなミツバチを高萩市で育む養蜂家の石井崇士さんは、県内各地でポリネーションを展開し、採蜜したハチミツの販売をしています。 実は両手で数える以上の多様な職を経験した石井さん。高萩市の自然に関わる仕事を模索していた中、「テレビで偶然、都心のビル屋上でハチミツを採取する番組を見たんです。都会でそんなことができるなら、自然豊かな茨城ならもっとできるんじゃないかと思ったんですよね」と養蜂へのチャレンジを決意します。 そして親族のつてを頼って、城里町在住で茨城県養蜂協会の長島哲也会長に弟子入り。 養蜂のノウハウを1年間学んだ後、農林水産省の経営開始資金を活用し必要な資材を整えながら3年前に養蜂家デビューを果たしたのです。
農家に選ばれる優秀なポリネーターを飼養
コーヒー豆の麻袋を燃やした燻煙器で蜂を大人しく落ち着かせてから作業スタート
妻の真央さんがパッケージデザインを担当した「いばらきはちみつ」
石井さんの養蜂場は、高萩市と日立市内の人里離れた3カ所。日当たりと気温のバランスが良く、適度な風通しと静けさがある森の奥に約120群、約1億匹のセイヨウミツバチを飼養しています。 その一カ所となる高萩市内の某所には、花の香りに導かれたミツバチ達が自由にのびのびと飛び回っていました。 県内でポリネーションが活用される主な作物は、施設栽培のメロン、イチゴ、スイカや露地栽培のリンゴ、梨など。 石井さんは昨年から常陸太田市のイチゴ農家、筑西市のスイカ農家と連携しています。 「『こんなにいい蜂なら、石井さんから蜂を借りたい農家さんがたくさんいるよ』と嬉しい反響をもらえました。来年に向けて、群を増やしている段階です」 農家に選ばれる蜂を飼養するこだわりは、優しく丁寧に扱うこと。 「例えば、巣箱の蓋を閉じる時、巣枠を持ち上げた時にスッと入り込んだ蜂が潰れてしまう。そうすると、『仲間が死んだ、殺された』というフェロモンが出て、繰り返せば繰り返すほど、群の気性が荒くなるんです」 石井さんは極力、蜂にストレスを与えぬよう、掃除や修理、群の健康状態の確認しながら丁寧に巣箱をメンテナンスしています。 しかし養蜂の世界では群の維持管理のため、産卵能力が低下した女王蜂を人工的に交代させるのが一般的。 「一番辛い作業」と語る石井さんは、自身の生活を支えてくれる全てのミツバチ達に対して、感謝の念を決して忘れません。 ミツバチ達はその想いに応えるように、穏やかで働き者。優秀なポリネーターとしてすくすくと成長しています。
希少な純茨城県産の百花蜜
左手首の治療で高萩市内に通院していたことが養蜂家への転機となった石井さん
ミツバチが圧死しやすい巣箱の開閉は細心の注意を払う
寒い冬を越えて、さまざまな花が開花する春先は、ミツバチ達の最盛期。 「ポカポカ陽気の春は人にとっても蜂にとっても過ごしやすい季節。巣箱から飛び立って、蜜を集めて帰って来る姿を見るのが一番幸せ。ずっと見ていられますよ」 石井さんが採蜜するのは4、5月の春先のみ。 ミツバチたちの縄張りとなる半径2km以内の主な蜜源は、桜をはじめとする春のさまざまな花たちの百花蜜のハチミツを採取しています。桜をはじめとする春のさまざまな花たちの百花蜜は、癖が少なく口当たりが爽やかで、優しい甘さが特徴です。 石井さんによれば、「自慢は天然100%の自然の恵み。香りや栄養素が損なわれないように、焼いたパンにハチミツを塗ったハニートーストがおすすめです。40~50度の白湯に大さじ1杯を溶かして朝と寝る前の2回飲むと、睡眠の質も上がるし、目覚めてからも爽快ですよ。お客様にはヨーグルトに混ぜて味わったり、お酒が好きな方はブルーチーズと合わせる方もいますね」とのこと。 ビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノールなど150種類以上の栄養成分がバランスよく含まれていると言われるハチミツ。その貴重な天然成分本来の効能が保たれるように加熱はしていません。 日本で販売されているハチミツのうち、純国産は10%以下。その中でも大変希少な純茨城県産のハチミツとなっています。
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駆け出しの養蜂家として一歩一歩、前進してきた石井さん。今後はどんなチャレンジを模索しているのでしょうか? 「まずは一人前の養蜂家となること。畜産業の中でも自然に与える影響が大きく、周りの作物や花に貢献できる仕事。農業王国・茨城の縁の下の力持ちになれたらと考えています」と夢を語ります。 世代交代が徐々に進んでいる養蜂の世界。 蜂の研究者を招いて最新の専門知識を深める茨城県養蜂協会主催の勉強会や同協会のネットワークを活用し、病害虫対策など最新の養蜂に関する情報を入手したり、日々研究に余念がありません。 そして、胸に抱いているのは、地域への貢献です。 「ハチミツが高萩市の特産品の一つとなり、訪れた人々に喜んでもらい、『高萩っていい場所』と思ってもらえたら嬉しいです」と高萩の食の新たなシンボルとなることを希望しています。 その他にも、廃校を活用したキャンプ場「高萩ユーフィールド」でハチミツ絞りイベントを開催するなど、地道な草の根活動も実施していく方針です。 国連環境計画(UNEP)によると、世界の食料の9割を占める100種類の作物種の内、7割はハチが受粉を媒介していると言われています。 石井さんは養蜂家として茨城の食の未来を守り、ハチミツを通じて地域と人の架け橋となる挑戦を続けていきます。
インフォメーション | |
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名称 | 石井崇士さん |
住所 | 茨城県高萩市 |
その他の情報 | ※このページの情報は、2025年7月時点のものです。 |
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