いばらきの食に挑戦する人たち
農家は総合科学霜多増雄さん(取手市)
ハーブとの出会い
シモタファーム圃場
シモタファーム作業風景
シモタファームの野菜
シモタファームは、取手市にある農場で、年間約120種類ものハーブと野菜を生産しています。園内にラボ(研究室)をつくり『美味しい野菜の成分を科学の力で証明する』をモットーに、40年以上無農薬・無化学肥料の野菜づくりを続けています。
霜多さんのお父さんの代から始まった農業。当時はスイカと米を作っていたそうです。霜多さんは高校卒業後に父と共に働き始めるも衝突し、その勢いで海外へと渡ります。
「高校卒業後は農業の勉強の為にアメリカへの留学が決まっていたのですが、家庭の事情で行けなくなり、モヤモヤしていました。それもあって父と喧嘩したのをキッカケに、イギリス行きのチケットを買って飛行機に飛び乗りました。」 それは宛てのない出航でした。しかし農業について何かしら海外から学びたい、海外の農業を見てみたい、そう考えていたという霜多さん。熱い思いを胸に秘めイギリスへと向かったはずでしたが、到着したのは何と、フランスでした。
「イギリス行きのチケットを買ったつもりが、フランス行きのチケットだったんです。当時は英語もまったくわからないし、海外の土地勘ももちろんありません。よくわからないまま買ってしまいました。」
シモタファームのハーブティー
間違えてフランスに来てしまった霜多さん。英語より更に馴染みのないフランス語圏に降り立ち、途方に暮れたそうです。しかし、この地で今後の人生を大きく変える出会いがありました。それは、フラリと入ったレストランでのこと。
「サラダが出てきて、“臭いの強いサラダだなぁ”と思って食べてみたら、すごくうまい。肉の上にもミントソースがかかっていて、これも絶品。これがハーブとの出会いでした。全く知識のない自分でも“うまい!”と感じたのだから、今度絶対に日本でも広まる!と確信しました。」
ハーブを作ろう、そう決めた霜多さん。その後、イギリスをはじめヨーロッパ・中東などの海外を旅して学んだ栽培方法を独自に磨き上げたそうです。
一流料理人との出会い
シモタファーム 霜多増雄さん
シモタファーム スペアミント
帰国後すぐにハーブ作りに着手した霜多さん。まずはハーブ界で主流のスペアミントの出荷から始めたそうです。
「スペアミントを築地市場に持って行ったら、“においが強いものを持ってる奴がいる”と途端に有名になりました。目立ってはいたものの、買おうという人は当時ほとんどいませんでした。」しかし、ここでも霜多さんに大きな出会いが待ち受けていました。
「ホテルオークラの小野ムッシュや帝国ホテルの村上ムッシュの目に止まり、私のハーブを使いたいと言ってくれたのです。」この出会いから、国内の一流料理人が次々と霜多さんのハーブを求めてくれるようになりました。その噂はフランスにも伝わり、フランス料理界の「レオナルド・ダヴィンチ」と称される故アラン・シャペル氏とも交友関係ができ、氏の葬儀の際にも呼ばれ、参列したそうです。
科学的分析データの解析を基にした「安全な野菜」
シモタファームの野菜
シモタファーム 霜多増雄さん
今から28年ほど前、新潟で行われたイベントをきっかけに、薬科大学の教授と意気投合した霜多さん。その方のアドバイスの元、園内にラボを設置し、土と野菜の成分を分析する機械を導入しました。
「安心安全というけれど、私は自分が作った野菜の成分も知らずに“安全です”とは言えません。朝採れは、新鮮、美味しい、と言いますが、これらにエビデンス(根拠)はありません。土や野菜の成分を分析し、数値化し、検証してデータを蓄積していけば、植物栄養素の高い、エビデンスのある本当に安全でおいしい野菜ができます。うちでは栽培期間に農薬を使わずにハーブや野菜を作っているけれど、農薬よりもっと気にしなければならない成分が隠れている場合だってあるんです。」
霜多さんは、農家さんの畑の土や作物の分析依頼を快く引き受けているそうですが、分析結果が出ても、多くの農家さんは従来通りの土づくりをなかなか変えることはできないそうです。
「数値結果を基に、必要量を畑に撒く。必要な要素の量は明確に出ているので、経費の無駄もなくなり、本当に安全な野菜ができる。難しいことじゃないんだけど、農家の方たちは自分のやり方を変えるのに時間がかかります。」
霜多さんの分析による栄養素の多い“本当に安全でおいしい野菜”とは、硝酸塩濃度が低く、抗酸化力が高い野菜なのだそうです。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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スペアミントの生産を始めてからおよそ40年。現在のシモタファームでは約8ヘクタールの広大な敷地でハーブや野菜が作られています。
霜多さんの展望はいち農家を超え、日本の農業界全体を見据えたもので、アジアなどからの農業実習生を受け入れて母国の農業普及にも積極的に貢献しています。
科学的根拠を持つ“エビデンス(根拠)のある野菜づくり”は、海外からも注目を浴び、国内外を問わず講演依頼が届きます。年間8~10カ国を訪れるという霜多さんに今後のビジョンを伺ったところ、
「農家は総合科学だと思っています。農家の力で医療費10%削減。これが私の生涯の目標です。さらに、消費者の皆さんのために、いつか野菜にその分析結果を表記して販売したいですね。」と語ってくれました。
インフォメーション | |
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名称 | シモタファーム | 住所 | 取手市貝塚192 |
お問い合わせ | TEL:0297-78-8239 |
その他の情報 | ※この情報は2015年度時点のものです。 |
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