PICK UP/ 茨城のうまいもの特集

いばらきの食に挑戦する人たち

ハートフルファーム土の香(とのか)八木岡岳暁さん(水戸市)

ハートフルファーム土の香(とのか) 八木岡岳暁さん(水戸市)

言い訳無用。
いいものを作り続ける!

就農のきっかけ

八木岡さんのイチゴ八木岡さんのイチゴ

八木岡岳暁さん八木岡岳暁さん

 八木岡岳暁さんは、約9年間の東京でのサラリーマン生活を経て、水戸市で家業のイチゴ農家を継ぎました。
 昔は父の背中を見てなんとなく“農業はやりたくない”と思っていて、就農について当初は前向きではなかったそうです。長男だから、いつかは水戸に戻ろうと決めてはいたものの、東京での仕事のこともあり踏み切れずにいたそうです。
 ある時、父の作るイチゴが“とてもおいしい”という話を聞き、初めてスーパーでイチゴを買って食べてみました。いろいろ食べ比べると、“こんなに違うのか!”と、そのおいしさに気付いたそうです。
 「最初は“父が作ったイチゴの販売をメイン”に事業をしようと思っていました。でも、父が年を取って農業ができなくなったら、このイチゴは終わっちゃうのか、と思ったら、自分が作るしかないな、と。」
 こうして覚悟を決めた八木岡さんは、東京生活の最後の1年間を、就農に向けた準備活動にあてました。全国の農家の方と交流したり、父のイチゴを持ってイベントに参加したりするなかで、思ってもみないチャンスがやってきました。

チャンスをつかんでスタート

八木岡さんのイチゴ八木岡さんのイチゴ

八木岡岳暁さんと鎧塚俊彦シェフ 八木岡岳暁さんと鎧塚俊彦シェフ 

 六本木のミッドタウンで開かれたマルシェ。ここで八木岡さんに起きた"ミラクル(ご本人いわく)"は、その後の八木岡さんの農業に対する考え方を大きく変える出来事となりました。
 このマルシェでは、出店する農家とミッドタウンに店舗を構えるシェフとのコラボレーション商品を作ろうという企画がありました。
 八木岡さんも、ミッドタウン内の名だたるシェフを前にプレゼンテーションを行ったところ、八木岡さんのイチゴが日本を代表するパティシエ『ToshiYoroizuka』の鎧塚俊彦シェフの目に止まりました。なんと『ToshiYoroizuka』の契約農家としてイチゴを納めることになったのです。
 鎧塚シェフとの会話の中で、本当に品質の良いものがあれば、直接取引を望んでいるシェフやパティシエはまだまだたくさんいることに改めて気づいたそうです。八木岡さんの中で、農業のイメージが“生産者の努力と買い取り価格が伴わない仕事”から、“可能性を感じる仕事”にシフトしていきました。

それぞれにメリットとデメリット。

八木岡岳暁さん八木岡岳暁さん

八木岡さんのイチゴほ場八木岡さんのイチゴほ場

 実際に就農して6年目を迎えた八木岡さん。鎧塚シェフとの取引をはじめ、順調に直接の取引先は増え、希望していた通りの販路を築くことができました。
 「価格も、自分の希望の価格で販売することができていますが、いいものを出し続けなければならないプレッシャーや、ご注文いただいた量は必ず出さなければならないこと、収穫量が多い時期に注文が多いとは限らないことなど、市場出荷とは違った難しい面も多いです。」と、実際に就農してから分かったことが多いと話してくださいました。
 「市場出荷には市場出荷のいいところがあり、直接取引には直接取引のいいところがある。これは、それぞれの向き不向きだな、と今は思っています。」
 八木岡さんは、毎年“八木岡さんの思い描いていた農業”に一歩ずつ近づいています。

土づくりは自分の中で一番大事

八木岡岳暁さん八木岡岳暁さん

コーヒー粕コーヒー粕

 八木岡さんのお父さんは、イチゴ作りの名人。日々の温度管理や冠水のタイミングは独自のものですが、栽培ノウハウは、お父さんから習得したそうです。八木岡さんのほ場がある“水戸市中河内町”は、沖積地帯で野菜もイチゴも育てやすい土壌と、ミネラルをバランスよく含んだ地下水があり、とても恵まれた土地なのだそうです。
 「イチゴの場合、味を決めるのは、品種の力が7割、残り3割が生産者の努力だと僕は思います。いろいろと試行錯誤をしていますが、一番大事なのは土づくりだと思っています。太陽熱土壌消毒を夏に行い、堆肥や肥料を混ぜ込んで土をつくります。最近は、酵素に注目していて、微生物がよく働いてくれることで病気を抑え、いちごの生命力(鮮度)維持につながると考えています。熟した状態で出荷するので、鮮度がどれだけ維持できるかがとても重要。毎年少しでもいいものが作れるようにしていきたいです。」

いちご技工士の奥様

八木岡美雪さんのイチゴパック詰め作業八木岡美雪さんのイチゴパック詰め作業

八木岡美雪さん八木岡美雪さん

 どんなに美味しいイチゴでも、美しくパッキングされていなければ台無しです。
イチゴの選別・パック詰めは、八木岡さんの奥様・美雪さんが担当しています。
 美雪さんはご自身を『イチゴ技工士』と名付け、作業台に向かってひたすら選別とパック詰めを行います。「パック詰めの作業は、以前にプログラマーとして勤務していた経験と少し重なる部分がある」と言います。
 「プログラムと同じで、地味にコツコツやる仕事が向いているんですかね。パックの中に綺麗にしかもピッタリ並べるのには知識と経験が必要です。“大きめでぷっくりしたのはココ”など、イチゴを見ただけでどのポジションに入れるかを判断しています。バランスがあり、うまくやると綺麗な1パックができるんです。」
 八木岡さんご夫婦は、この役割を適材適所だと言い、夫婦二人三脚でイチゴをお客様のもとに届けています。

「土の香(とのか)」の由来

八木岡岳暁さん八木岡岳暁さん

八木岡さんのイチゴ八木岡さんのイチゴ

 ハートフルファーム土の香。
 八木岡さんの農園の名前です。なぜ“土の香”と名付けたのでしょうか。
 「中河内町には、僕以外にも一旦は東京に出て、戻ってくる人がけっこういるんです。ある時、近所のおじさんに、“なんで中河内町の長男はみんな地元に戻ってくるんだろうね”と聞いたら“土のにおいが染み付いているからろう”と答えたんです。実は僕も東京で暮らしていた時に、ふと香る季節のにおいを感じると、いつも中河内町の風景を思い出していて。地元を離れて何年たっても、自然の香り=地元の風景というのは変わらなかった。だからおじさんの言葉がガッツリと響いてしまって。僕も、土の香りに誘われて戻ってきたんだから、“土の香”にしようと決めました。ちなみに父は“読めない”と反対しましたけどね。笑」
 土にこだわる八木岡さんらしい、暖かみのある名前です。

販売時期
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

夢~さらなる挑戦~

 「僕はまだ、シーズンを通して完璧にイチゴ作りをやり通せたことが無いんです。肥料が足りなくなっていることに気付かなかったり、施肥のタイミングがズレてしまったり。シーズンを通して完璧なイチゴが出るようになって、ようやく一人前になれると思っています。だから、シーズンを通して完璧ないちごを出し続けられるようになることが夢です。いつか、“いつでもおいしいいちごを食べさせてやるよ!”と言えるおっさんになりたい」
そう語る八木岡さんの目は夢にあふれ、輝いていました。八木岡さんの挑戦は、まだまだ続きます。

インフォメーション
名称 ハートフルファーム土の香
住所 水戸市中河内町1007
お問い合わせ TEL:090-4410-1514
WEBサイトURL http://www.tonoka.net/
その他の情報 ※この情報は2015年度時点のものです。

今、おすすめの記事

TOP