いばらきの食に挑戦する人たち
「恵水」を茨城のトップブランドへ!岡野 孝雄さん(石岡市)
茨城のブランド梨「恵水」
大玉で甘い!「恵水」。このシールが厳しい選果基準を満たした証。
恵水(カット)
岡野 孝雄さん
茨城県は全国でもトップクラスの梨の生産地です。
茨城県オリジナル品種の梨「恵水(けいすい)」は、糖度が高く、酸味が少ないため、食べたときにとても甘く感じられる梨です。大玉で食べごたえがあり、梨特有のシャリッとした食感とみずみずしさ、さわやかな風味も魅力です。
収穫時期は9月上旬~下旬ごろ。秋の深まりとともに味にコクがのり、他の梨に比べ、保存がきくのも特徴です。
「茨城県梨組合連合会」の会長で、平成25年の試験栽培の段階から「恵水」の生産・普及に携わる岡野 孝雄さんは、石岡市で100年以上・3代続く梨農家で、県内で最も多くの恵水の樹を保有しています。
「『恵水』は、大玉で糖度も高いし、本当に旨い梨です。県知事の『恵水を茨城のトップブランドにする!』との陣頭指揮のもと、生産者全員が一丸となってトップブランドに相応しい恵水の栽培に全力で取り組んでいます。私の所属する「JA新ひたち野 石岡梨部会」(以下:石岡梨部会)では、光センサーによる糖度選別をはじめ、選果基準を厳しく定めており、「恵水」の中でも糖度13度以上、5kg箱で6玉~10玉入りの大玉の恵水を「特選恵水」として出荷しています。市場では「特選恵水」の6玉入りが1箱1万円の値が付いたこともあります。」
「恵水」は、現時点(令和元年時点)では県内全体の梨の出荷量の一割程度とまだ少量ながら、きちんと作れば評価され、高額で取引される梨であることから、栽培に着手する生産者は年々増えています。現在は、ごく一部のスーパーや直売所、都内の百貨店等でしか購入することができない「恵水」ですが、岡野さんによると、「年々出荷量が倍々で増えているので、来年、再来年はもっと多くの皆さんに食べていただける機会が増えると思う」とのことです。
「大玉」にこだわる!
石岡市のブランド梨「ありのみ」。筑波大学芸術系学生がデザインした化粧箱に入れて販売される。
大玉の恵水。男性(岡野さん)の手のひらの上でもこの存在感。
岡野さんの「恵水」の圃場。約50本の恵水の樹があるという。
岡野さんの住む石岡市では、2つのJA(新ひたち野、やさと)が連携し、梨「幸水」を、一般の「幸水」とは別に、「特別な栽培」及び「特別な選果基準」を設定した発生率5%の貴重なブランド梨『ありのみ』の生産・販売も行っています。
「『ありのみ』は糖度12度以上で3L(350g)以上、傷がなく形の良いもののみを選抜します。『ありのみ』も『恵水』も、“大玉”というのがカギで、梨は大玉になればなるほど糖度がのりますし高値で売れるので、我々生産者はいかに大玉で形よく作るかを常に念頭に置いて栽培に取り組んでいます。」
「梨を大玉にするには、摘果(梨の実がまだ小さな段階で余分な果実を取り除き果実数を制限する作業)を、本来の摘果作業時期より1ヶ月程早めに行います。摘果は、切る果実と残す果実の見極め方が非常に重要で、特に早めに行うとなると、正しく見極められるまでに十年以上の経験が必要な程難しい作業です。また、良い果実を実らせるには、たい肥等有機質の肥料を使った土作りも重要です。」
さらに石岡梨部会では、安全・安心な梨作りを行うため、生産者全員が防除(農薬)歴を提出する決まりがあり、基準に1つでも満たない生産者がいると、部会全体の梨が出荷停止になるため、部会員全員が農薬の使用を少量に抑えた生産を心掛けているそうです。
栽培技術の研究を怠らない
恵水のジョイント試験栽培
恵水の根圏制御 盛土式試験栽培
岡野さんは、「全国果樹研究連合会 ナシ専門部会」の副部長も務めており、全国の梨農家との情報交換を行うなかで、気になった栽培技術があればすぐにそれを試すなど、より良い栽培方法の研究に余念がありません。
取材時に見せていただいた圃場では、「恵水」の①三本仕立て栽培(茨城県で主流の栽培法。主枝を2本出しそこに側枝を配置する技術)、②ジョイント栽培(神奈川県発の栽培法。ナシの樹を隣同士で繋げて1本にしてしまう技術)、③根圏制御盛土式栽培(栃木県発の栽培法。地面に遮根シートを敷き、その上に培土を盛って樹を育成する技術)の試験栽培が行われていました。
「今のところ根圏制御はとても良いですね。恵水は通常3年目以降の樹からまともな実を付けますが、根圏制御栽培を行った恵水は、1~2年で実を付けました。」
岡野さんは、新品種の試験栽培も常に行っており、9月下旬~10月に出荷される「新高」と同時期にできる梨「甘太(かんた)」や、洋梨に似た形でりんごのような味わいの「王秋(おうしゅう)」などに期待を寄せています。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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「「恵水」を茨城のトップブランドにすることです。年々後継者が減りつつあるなかで、「恵水」のように新しく、単価の良い梨を作れることは、我々農家の希望の光になります。良い梨を作り、それを適正価格で販売ができ、消費者に喜んでもらえる、という流れができたら大変嬉しいです。何より、消費者の『旨い!』という声を聞くことが一番嬉しいので、立派で、旨くて、安心・安全な良い梨を心を込めて作り続けて、一人でも多くの方に喜んでもらいたいですね。」
取材に訪れた9月は、「恵水」と「あきづき」の最盛期。岡野さんは、「石岡のおまつり(常陸國總社宮例大祭)に参加する子供たちに梨を持って行く」と、意気揚々と大量のあきづきの準備をしている姿が印象的でした。
インフォメーション | |
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名称 | JA新ひたち野 石岡支店 石岡梨部会 | 住所 | 茨城県石岡市府中4-8-17 |
お問い合わせ | TEL:0299-23-2057 FAX:0299-24-1346 |
WEBサイトURL | http://www.shin-hitachino.com/ |
その他の情報 | ※この情報は、2019年9月時点のものです。 |
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