PICK UP/ 茨城のうまいもの特集

いばらきの食に挑戦する人たち

岩井洋菜前進会 セロリ(セルリー) 生産者内田 栄徳さん(坂東市)

岩井洋菜前進会 セロリ(セルリー) 生産者 内田 栄徳さん(坂東市)

「神様の教え子」たちの美味しすぎるセロリ

神様の教え子「岩井洋菜前進会」

伊藤さんと同じデザインで「江」を「進」に変えたパッケージ伊藤さんと同じデザインで「江」を「進」に変えたパッケージ

神様の教え子「岩井洋菜前進会」

神様の教え子「岩井洋菜前進会」

 爽やかな香りとシャキシャキの食感が人気の野菜「セロリ」。「セルリー(※)」とも呼ばれるこの野菜は、独特の強い香りで好き嫌いが分かれる野菜です。よく使われるのは茎の部分ですが、実は葉は茎の2倍のβ-カロテンが含まれるといわれているので、どちらも一緒に食べるのがおすすめです。

 セロリは、日本国内では昭和30年代ごろから普及した野菜で、涼しい気候を好むことから、夏から秋は長野県などの高冷地で、冬から春は静岡県などでハウス栽培されています。
 茨城県では、国内のセロリ栽培の第一人者で、『セロリの神様』と呼ばれた故・伊藤仁太郎さんの元で研修を受けた教え子たちが、昭和48年頃に坂東市のセロリ生産者グループ「岩井洋菜前進会」(以下:前進会)を発足しました。現在も伊藤さんから受け継がれた「日本一おいしいセロリ」を作る最高峰の技術を駆使し、栽培を行っています。
 「前進会」のセロリは、伊藤さんと同じデザインのパッケージを使用しており、伊藤さんのセロリには丸の中に「江」の字が入っていたのをなぞらえて、丸の中に「前進会」の「進」の字を入れたマークをつけて出荷されます。

※野菜生産出荷安定法施行規則(第八条)では、「セルリー」と表記されていますが、「セロリ」と「セルリー」は同じものです。

土づくりと温度管理

腐葉土を混ぜた土腐葉土を混ぜた土

育苗ハウス内育苗ハウス内

 前進会のメンバー内田栄徳(ひでのり)さんは、伊藤さんの元で直に技術を学んだ父親の内田和幸さんと共に「土づくりと温度管理」にこだわる栽培を行っています。
 1ha強の広大な内田さんのハウス内は、まだ小さな赤ちゃんセロリから出荷可能なセロリまで生育順に分かれています。
 「セロリはまず、育苗ハウスで伊藤さんが育種したオリジナルの種を蒔いて苗を育ててから約1ヶ月ほどで育成ハウスに定植します。苗が土にちゃんと活着する(根付く)かが勝負所です。良い土が糖度の高いセロリを作るので、牛フンたい肥や腐葉土など有機質の肥料を入れたやわらかな土作りをして、根が張りやすい環境を整えています」と内田さん。 また、「定植してからの約30日間は、温度管理がとても重要だと思っているんです」と続けます。「セロリがちゃんと育つかどうかは温度管理の良し悪しにかかってきます。例えば新葉や茎が小さく“大きくならないかもしれない”と思ったら、普通は肥料をやって温度を上げると思うのですが、僕は逆に肥料はやらずに風を入れて温度を少し下げる。一見真逆の行為でも、こうすることで根がしっかり張って、のちにセロリが大きくなってくれるんです。こうしたことが常々起こるので、定植後の30日間は気が抜けません。逆にこの30日間をちゃんとクリアできれば、あとは放っておいても良いくらい」と笑います。
 ハウスの温度管理は自動式ですが、生育状態に応じた細かな微調整は、やはり人の力でなければ行えません。

株で出荷

出荷直前のセロリと内田さん出荷直前のセロリと内田さん

 「このセロリはあと10日くらいで出荷です」と内田さんが見せてくれたのは、私達が普段目にするセロリとはまるで別物の、大きく立派なセロリの株でした。実はセロリはこのような株の状態で市場に出荷されることが多く、店頭に並ぶのはスーパー等で軸からカットされた状態のものなのだとか。
 「軸から外してから時間が経つと味が落ちてくるので、スーパー等でセロリを購入するときは茎の根元の切り口が新しいものを選ぶといいと思います」と内田さんは言います。

販売時期
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

岩井洋菜前進会 内田 栄徳さん

夢~さらなる挑戦~

 こうした内田さんのたゆまぬ努力の末に実った「前進会」のセロリは、葉に張りがあって茎が太く、まろみのある柔らかな香りがします。また、表面はパリっと固いですが、なかは驚くほどみずみずしいです。さらに驚きなのは、エグみが一切感じられないので、いくらでも食べ続けることができます。「マヨネーズに、少しの味噌と砂糖を入れて作ったディップにつけて食べると美味しいですよ」と内田さん。
 今後の展望をお伺いすると、「天候に左右されない栽培技術を確立したいと思っています。日照不足を液肥で補うことはできないか、とか。まだまだ勉強中ですが、そうした技術を磨いて、栽培規模を拡大していけたらと思います。あと、『茨城県産』と書いてあるセロリをスーパー等で見つけたら、ぜひ食べてみてください!」と語ってくれました。

インフォメーション
その他の情報 ※この情報は、2019年1月時点のものです。

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