PICK UP/ 茨城のうまいもの特集

いばらきの食に挑戦する人たち

下飯沼栗生産販売組合 組合長田口 一彦さん(茨城町)

下飯沼栗生産販売組合 組合長 田口 一彦さん(茨城町)

栗では全国で初めて「GI」登録!

「飯沼栗」とは?

「飯沼栗」とは?

貯蔵前は「飯沼栗」の名は付かない貯蔵前は「飯沼栗」の名は付かない

 県央部に位置する茨城町下飯沼地区で生産される「飯沼栗」の特徴は、一般的な栗と比べて甘く、また、見た目で分かるほど粒が大きいことです。「飯沼栗」の販売時期は、本来の栗の最盛期である9月・10月を過ぎた10月下旬から11月中旬です。その理由を下飯沼栗生産販売組合(以下 下飯沼栗組合 ) 組合長の田口さんは、「収穫後に低温冷蔵庫で20日間ほど貯蔵したものが『飯沼栗』だからです」と答えます。
「飯沼栗」とは品種名ではなく、下飯沼栗組合による特別な栽培・出荷方法を施した栗に付いたブランド名なのです。
 東京の市場では「最高級の栗」ともいわれるほど評価が高く、取引き価格は通常の2倍以上。全国的にも、栗を扱う者ならばその名を知らぬ人はいないといわれる「飯沼栗」は、栗では全国で初めて「GI(地理的表示保護制度)(※)」に登録されました。

(※)GI…「地理的表示(Geographical indications)保護制度」は、長年培われた特別な生産方法により、高い品質と評価を獲得した農林水産物・食品等の産地の名称(地理的表示)を、知的財産として保護する国(農林水産省)の制度。

一毬一果(いっきゅういっか)

1つのイガに1つの実を目標としている1つのイガに1つの実を目標としている

合計3回の選別を行う合計3回の選別を行う

 「飯沼栗」の生産を行うのは、茨城町町内の「下飯沼栗組合」11名です。組合長の田口さんに「飯沼栗」誕生の背景についてお伺いしました。
 「うちでは父が栗栽培を始めたのですが、父たちが他産地との差別化を図るために、高品質な栗を作って他産地の出荷のピーク時期からズラして出荷を始めたというのが始まりです。そのために品種は最も遅い時期に実をつける“石鎚(いしづち)”に絞り、通常一つの毬(イガ)に3つの実が入る栗を大粒に育てるために1つの毬で1つの果を目標とした『一毬一果(いっきゅういっか)』の栽培技術を研究していきました。さらに、時期をズラして出荷するために、当時は収穫した栗をおが粉の中に入れて出荷まで貯蔵したそうです」
出荷においては、組合員個人で行う貯蔵前、貯蔵後の2回の選別に加えて、出荷前に組合員全員で1回、合計3回行うことを徹底しました。厳しい選別を行うことで品質を保つその伝統は、現在も固く守られています。

下飯沼栗組合 田口 一彦さん

収穫後の栗

 いざ出荷を始めると、市場では組合員の予想どおり、通常の2倍以上の値が付きました。さらに、厳しい選別のおかげで虫食い等がほとんど無く、しかも大粒の栗となると、さらに評価はうなぎ上り。加えて『飯沼の栗は甘くておいしい』という声が多く寄せられたといいます。
 「当初は出荷を遅らせるために行っていた貯蔵が、どうやら栗を甘くする効果があるらしいと分かったんです。貯蔵により糖含量が増加することが科学的に立証されたのはそれからしばらく経ってからでした」と田口さん。温度が安定しないおが粉での貯蔵に限界を感じた当時の組合員らは、昭和55年から組合員一人1台の冷蔵庫を購入することを決め、本格的な栗の冷蔵貯蔵を開始しました。以降「飯沼栗」は、市場との信頼関係とブランドの価値を守るために、直売はせずに100%市場出荷というスタイルを貫いています。

自然のサイクルに近い形で栽培

太陽の光が降り注ぐ栗畑。土には牧草を栽培し湿度を管理している太陽の光が降り注ぐ栗畑。土には牧草を栽培し湿度を管理している

収穫はひとつ一つ人の手で拾う収穫はひとつ一つ人の手で拾う

 収穫時期の田口さんの栗畑におじゃますると、太陽の光が地面まで降り注ぎ、地面は柔らかで牧草が茂っています。
 「牧草の種子を蒔き、刈った草をそのままにしておくと、夏の土の水分の蒸発を防ぐことができます。害虫駆除等の農薬もほとんど使いません。代わりに剪定をきちんとして枝の風通しを良くして虫が付かないようにしています。組合員一同、薬等はなるべく使わずに、自然のサイクルを大事に栽培していこう」といつも言っているとのことです。
 田口さんら組合員は、下飯沼という地域で一緒に育ってきた家族のようなもの。「常に互いの畑が目に入るので、全員が互いに今何をしているか、個々の栽培スタイルまで熟知しています。畑や木に何か少しでも変化があれば知らせたり、逆に知らせてもらったり。何をするにも皆で話し合いながら栽培しているので、常に仲間の目があるからこそ、良い栗を安定して栽培できているのだと思います」
 甘くて大きい「飯沼栗」の評判は年を追うごとに各地へ広まり、茨城県共励会で農林水産大臣賞を2回、天皇皇后両陛下行幸啓天覧等で茨城県知事感謝状を2回、全国果樹技術・経営コンクールでは全国経営管理委員会会長賞を受賞しました。

販売時期
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

下飯沼栗組合 田口さん

夢~さらなる挑戦~

 平成29年に栗では全国で初めて「GI」に登録された飯沼栗。登録を受けて田口さんは、「組合員の奥さんも含めて全員『ブランドの品質を自分達が背負っている』という意識が生まれて士気が上がりました。奥さん達は主に選別を担当しているのですが、GI登録以降は選別の目が更に厳しくなったと思います」と言います。
 今後の夢をお伺いすると、「若い後継者も育ってきているので今後は法人化も視野に入れて、もっといいものを大規模に生産していくことを考えています。また、今は生栗を市場に100%出荷していますが、1次加工等の製品化もおもしろいかなと思います」と語ってくれました。

インフォメーション
名称 下飯沼栗生産販売組合
住所 茨城県東茨城郡茨城町下飯沼1077
お問い合わせ TEL:029-292-8561(集荷所)
FAX:029-292-8561(集荷所)
その他の情報 ※この情報は2018年10月時点のものです。

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