いばらきの食に挑戦する人たち
笠間の栗に誇りと情熱を持つ小田喜 保彦さん(笠間市)
若さと情熱
茨城は、現在、栽培面積・生産量ともに日本一の栗産地です。産地のひとつ、愛宕山のふもと笠間市岩間地方で小田喜 保彦さんは、栗加工の専門店『小田喜商店』を営んでいます。
小田喜さんは、栗の木畑に囲まれた旧岩間町(現笠間市)に生まれました。漫画を描くのが得意で、漫画家・手塚治虫さんに憧れるおとなしい少年でした。大学進学を機に茨城を離れることになり、卒業後は都内でサラリーマンになったそうです。せっかくなら、いろんな所に行って、住んで、いろんな物を見てみたい。と、その冒険心は10年間で11回の引っ越しをした程。
茨城に戻ることになったのは、29歳の時。小田喜さんのご両親が地域の集まりの旅行委員になり「10月の忙しい時期で家は空けられないので、代わりに旅行に行ってほしい。」と頼まれたことがきっかけでした。旅行の期間は一泊二日でしたが、地域のかたと結びつきの深まった小田喜さんは、旅行が終わった後もそのまま茨城に留まり、ご実家の小田喜商店を継ぐことを決めたそうです。
小田喜さんは、一度東京に出たからこそ、地元茨城のことがわかったと言います。「笠間には、こんなに栗の木があるのに、何故全国的に有名じゃないんだろう?」「他の地方の栗はあんなに有名なのに」と、他の地域から見た、笠間の栗の評価の低さに驚き、悔しく思ったそうです。
やがて、お父様と一緒に会社を盛り上げていく中で、小田喜さんは、地域で栗を作り、加工して、売っていくという流れは「地場産業」だと感じるようになり、協力を仰ぐため、方々へ相談するようになりました。
「より美味しい栗製品を作れる新しい製造工場を作りたい」という願いは、なかなか取り合ってもらえませんでしたが、ついに県の工業技術センターの協力を受け、新たに、渋皮、栗ペースト、栗甘露煮の研究を始めました。
栗の加工工程での熱殺菌は、食品を安全に口にする為には必要なこと。しかし、熱が高すぎれば、栗本来の風味が無くなってしまいます。より美味しい製品を作る為、製法を編み出すまでには、何度も失敗や成功を繰り返したそうです。
出会いからの決意
小田喜さんは現在56歳。現役でご活躍されていますが、数年前まで「今後はのんびりやっていこう」と 人生プランを考えていたとのことです。
そんな矢先、2011年3月、東北地方太平洋沖地震が起こりました。建物から屋根は落ち、ブルーシートで雨風を防ぐ場面もあったと言います。
人生プランを考え直す出会いは、その直後にありました。風評を払拭しようと東京で開催されたイベントに出店してみると、小田喜商店さんの栗を「是非、取引させて欲しい」という企業と出会いました。「相手もせっかく熱意を持ってくれているのに、ここで自分が辞めるわけにはいかない。」と、小田喜さんは決意を新たにしたそうです。
しかし、全てがスムーズだった訳ではありませんでした。
「9月に栗の出荷シーズンを無事に迎えるには、7月には放射性物質検査を行い、安全を証明しなければ間に合わない。一度途切れてしまった取引は、再開が難しくなる。」と、小田喜さんは当時、笠間の栗を信じながらも気を揉んで過ごしたそうです。
このような状況の中、小田喜さんは、思いきって店舗のある建物を新築しました。笠間の栗にこだわっている小田喜さんにとって、これから笠間の栗が使えるかどうかわからない時期の、大博打だったと言います。「笠間の栗がダメだったら、自分達もダメでも、それはしょうがない。」そう思ったと、小田喜さんは笑って話してくれました。
そして、なんとかギリギリのタイミングで検査結果が判明し、従来の取引も継続し、出荷することができました。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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高齢化が進み、年々農家が減っていることが産地としての問題となっています。栗作りは30年。すぐに成功できるものでは無いので、一番いいのは農家の子供達が継いでくれることですが、なかなか現実にはうまくいきません。もっと、笠間の栗がブランド化されて有名になれば、茨城を出ていってしまった農家の子供達も『笠間の栗は良い』『自分も実家の栗を継ぎたい』と、戻ってきてくれるんじゃないかと思います。
自分がその為にできることは、笠間の栗をアピールできる良質な商品作りくらいです。地域にプライドが生まれるように笠間の栗をブランド化して、新商品を開発し、世の中に広め定着させるためあと10年頑張って、次の世代にバトンタッチしようと思います。
インフォメーション | |
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名称 | 株式会社 小田喜商店 | 住所 | 笠間市吉岡185-1 |
お問い合わせ | TEL:0299-45-2638 FAX:0299-45-2639 |
WEBサイトURL | http://www.kurihiko.com/index.shtml |
その他の情報 | ※この情報は2013年度時点のものです。 |
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