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「この人に聞く」

第17回  麻生地区甘藷部会 部会長 内山菊次さん


 【プロフィール】
  以前は落花生なども生産していたが、<紅こがね>の銘柄取得を機に、甘藷一本の道へ。写真右はJAなめがたの河野氏。部会としての成長だけでなく、JAとの関係を大切にしたいと、肥料や資材の共同購入などを勧める内山さんに「ここまで考えてくれる人はなかなかいない」と喜びの言葉を口にする

「うまい芋」をつくるため、意識は高く。

  茨城県の南東部に位置する麻生町(現・行方市)は、霞ヶ浦の温暖な気候と土壌に恵まれた、県内でも有数の農作地域。甘藷(サツマイモ)をはじめ、トマトやゴボウ、落花生、そしてタバコなど、実に様々な種類の農産物を生み出している。
  JAなめがたの麻生地区甘藷部会の発足は、昭和51年。発足以来、全国各地の産地へ出向くなどして精力的に研究と勉強を重ね、59年には主力品種であるベニアズマを<紅こがね>と命名し、62年には銘柄産地の指定を受けた。設立当時は50名だった部会員も、現在は123名(麻生地区として)。近年では新規参入者はないものの、堀取機や自動選果機の導入などで圃場面積を拡大し、部会全体としての販売高は設立当初の200倍以上になるまでに成長を続けてきた。そして、3代目となる部会長を務めるのが内山さん。「銘柄をもらってから生産者それぞれが意識を持ったことが最初の転機。地区役員など周囲のみなさんの理解と協力をいただいて成長してきました」と語る。品質管理においては「部会員それぞれの意識と責任が大切」としながらも、リーダーシップをとって「よりおいしい芋を生産するために」と、『うまい芋づくり研究会』を組織。収量よりも"味"にこだわって選りすぐった、高級感のある甘藷<匠こがね>作りに取り組んでいる。

 

科学的根拠に基づく「うまい芋」

  <匠こがね>の開発は、「うまい芋とは何が原動力か?」という疑問に対する答えを探す課題から始まった。そして数年前から農業改良普及センターの協力により、生芋のデンプン含量と肉質の関係を研究。その結果、甘藷の『おいしさ』を決める要因となる『強い甘味』と『適度なしっとり感』にはデンプン含量が重要であることを明らかにした。さらに、昨年11月にはうまい芋づくり研究会33名の堀取り直後の<匠こがね>のデンプン含量を測定。デンプン含量は圃場ごとに安定していること、生芋の比重によって簡易に測定できるということも明らかになった。
  この結果を活かし、『うまい芋づくり研究会』の取り組みはさらに次のステップへと進む。それが全国初の取り組みとなる『食味特性に応じた出荷時期の調節』という方法だ。これは、生芋はそのデンプン含量によって食味が異なるだけでなく、それぞれ掘取り直後から1ヶ月、2ヶ月と貯蔵期間を経るごとに変化していくことに着目したもので、例えばデンプン含量の高いイモなら掘取り直後は肉質が粉質で甘みが少ないものの、日数の経過につれて肉質が粘質で甘くなっていくという性質を活かそうという試み。デンプン含量が低いイモ、中間のイモなどそれぞれのタイプによって異なる『食味評価の良い時期』に応じて出荷開始の時期を変えることで、市場評価のアップ、産地のイメージアップにつながっている。
  また、同じ生産者でも圃場によってデンプン含量が違うものの、圃場を主軸に見ればその含量が安定していることに着目し、圃場別マップを作成。生イモのデンプン含量によって圃場を分類することで、消費者から指摘されていた味のバラつきをなくすことが可能になり、安定した食味を供給することができるようになったと言う。さらに年間を通して安定した品質と食味の甘藷を供給するためにキュアリング処理を行い、生産者それぞれが温度を一定に保つ貯蔵庫を設けるなど徹底した品質維持対策も実践している。

 

消費宣伝で産地と銘柄のイメージアップを

  主力品種の<紅こがね>は、美しい濃紅色の皮色と、鮮やかな黄色の肉質を持つ「ベニアズマ」を、JAなめがたの銘柄商品として他産地と区別して売り出した自慢の一品。このほか<べにまさり><紅赤><パープルスイートロード>などの品種を生産するが、「レギュラーものの出荷だけでは伸びない」というのが内山さんの考え。そこで数年前から<紅こがね>のおいしさを引き立てる、蒸かす・焼くなどの調理をした商品の販売に着手。地元はもとより全国のスーパーの店頭などで焼き芋機を使った調理販売を行い、販促活動に積極的に取り組んでいる。
  この活動が話題を呼び、最近では焼き芋機を導入して店頭販売を行うスーパーも増えた。また、昨年夏には新たに「冷やし焼き芋」を販売。冷めてもおいしい<紅こがね>の焼き芋の特性を活かした商品で、焼いてすぐ氷で冷やした芋を、半分に切ってカップに入れてスプーンをつけて販売。デザート感覚で食べられる手軽さとおいしさがうけて、女子高生にも大人気。今年はさらに規模を拡大し、産地アピールの大きな足がかりになると期待される。
  「いずれは部会員全員が甘藷の生産だけで生活できる収入を得ることが目標。そして我々の成長を支えて、喜んでくれるJAとの関係も大切にしていきたい」と、さらなる成長を目指して『うまい芋づくり』への挑戦を続ける。